続・ピアノ フタを開けてみれば経験値の勝利
先日、日本最大級のピアノのコンクール、ピティナの予選のことについて記事を書きましたので↓
その結果について追記したいと思います。
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これまでの経過(個人的目線)をザックリ説明しますと、
ロシア作曲家の曲を弾かせればピカイチの天才高校生、谷昂登さんの登場に人々がざわつく ⇒ ところが最終予選で驚きの15才森本隼太さんが奇才ぶりを発揮して人々をざわつかせる。
決勝では谷さんと森本さんの一騎打ちになるのかな?
と思っていたけれど…
決勝ではトップバッターということが響いたのか?、谷さんオーケストラと息が合わず(?)本領を発揮できず。精神的に動揺されたのか、ミスタッチも多くなってしまったのでした。
そして、
トリを取った森本さん。かなり良い演奏をされるも、演奏終り頃に疲れなのかテンションが上がり過ぎたのか、粗さが目立ちオーケストラともズレが出来てしまう。
そこへもってして、
山縣美季さんの安定感と抒情性が光る。ミスもほとんどなく、オーケストラとも息の合った演奏を魅せる。
正直、これは山縣さんが優勝か?と自分の中では思いました。
特に柔らかで夢のように上質な、お気に入りの所をピックアップしてみました(自分用)↓
ただ、他のファイナリストたちが、3人ともパワフルで華のある『ラフマニノフのピアノ協奏曲3番』を演奏した中で、山縣さんのみ、静かでロマンチックな『ショパンのピアノ協奏曲』を選んだことがどう出るのか?素人の私には未知数でした。
そして、
女性ながらにラフマニノフの重厚な協奏曲に挑まれ、最後までパワーと集中力を切らすことなく、危なげないテクニックをもってして演奏された尾城杏奈さん。
チャットを見る限り、骨太な男らしさも必要なラフマニノフを、端正に演奏された尾城さんの評価は分かれているのかな?という気はしました。「やはりラフマニノフはもっと力強くないと」という意見と「女性の弾くラフマニノフも素敵!」という意見に分かれていた感じでしょうか。
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で、
その日にグランプリの発表があり、ドキドキしながら発表を待っていました(まるで出場者のお母ちゃん)。
正直、ここまで幾多の予選を勝ち上がって、最終のたった4人に選ばれた人たちです。誰が選ばれてもおかしくないレベルの人たちなんです…(ピティナ決勝進出というだけでも充分な経歴になるようです)。
そして、
結果は…!!
尾城杏奈さんの優勝でした!
何というか、
谷さん森本さんというすごい天才が予選からドーンと目立っていて、そして、情感豊かな山縣さんが着実に勝ち上がって、なおかつ決勝ですごく良い演奏をして、そういうインパクトのある人たちに囲まれたために、やや存在がひっそりとしていた(?)尾城さん・という印象だったので、彼女の優勝に意外感を感じた人も居たようでした。
正直、私も「そうきたか!」感はありました(笑)
が、
冷静に考えれば、若さゆえにオーケストラと合わせるというあまりない経験に、パフォーマンスのやや下がった若き才能たち(谷さん16才、森本さん15才)に対して、経験値のやや優る山縣さん(ナント18才・信じられない落ち着き)と尾城さん(たぶん大学院生23才)の力が最後の最後にものをいったのでしょう。
オーケストラと共演するということは、非常に難しいことなんですね。
その点、尾城さんの演奏には、オーケストラとの兼ね合いに戸惑う部分もなく、非常にスムーズに『聴かせて』いたなと思います。
(人の評論を聞くかぎり)今年はコロナで外国人審査員が居らず、日本人のみだったということで、荒削りな天才タイプよりもきちんとした演奏の出来る人が好まれたのだろうという考察も見られました。
なるほど。
であるならば…
で・あ・る・な・ら・ば・!
なんで山縣さんが4位だったのか、⇐私はこの処遇が納得いかないのですが。・゜・(ノД`)・゜・。
(非の打ちどころの無い演奏だったと思ふ)
納得いかないこの気持ちに説明をつけるため、めちゃくちゃ勝手な邪推をしたならば・・・
○優勝した尾城さんと山縣さんは同じ先生に学ぶ同門
○同じ同門で1位2位になると、変なこと疑われそう
○尾城さんが優勝と決まったからには同門の山縣さんには今回は下の順位になっててもらおう…
○という考えが審査員たちに働き、山縣さんの得点は抑えられた
○結果、山縣さんは4位となってしまった…
みたいなことを妄想して自分で自分を納得させていました(≡д≡)
実際、
聴衆の選ぶ投票では、山縣さんは2位の人気でした。
あ、
この投票↑だけを見るとまるで谷さんが聴衆に支持されてなかったかのように見えてしまうので、トップバッターの非常に損だった事実を補足しますと、
○オンラインライブで初めの方に「音が聞こえない!」というアクシデントが続発していて、谷さんの演奏をまともに聴けなかった人が多かったのです。音響の問題はあとの奏者になるにつれ改善されていきました。
○聴衆は時間とともに増え、谷さんの時に4千人だった動画視聴者は森本さんの時には7千人になっていました。
○演奏終了からオンライン投票まで時間が無く、途中から見始めた人は前の方の人の演奏をちゃんと確認することがほとんどできなかった。
○ピアノは後の方になるほど温まり、良い音が出る(らしいです)。
という、
本人に責任の無い部分で票の減ってしまった谷さんはご不憫だったとしか…
(コンクールの順位、谷さんは3位でした)
ただ、
予選を重ねるごとに、谷さんに魅了されてファンになった人は多かったです。ロシア的なミステリアスさや不思議な色気、他にない個性と、すでに巨匠を思わせるたたずまい(笑)、そして確かな実力。
チャットには「谷さんと結婚したい!」と悶絶する女性も出現していました(笑)
私も個人的に谷さんを応援していました。
彼は世界で勝負できる人材だと素人ながら確信しておりますので、将来、チャイコフスキーコンクールの決勝で”谷昂登”の名前が見られることを、勝手に妄想しています(いや、現実になるに違いない!)。
多くの人にその存在が知られて、もっと多くのファンが付くといいなと思います✨⭐️
そうそう、
「聴衆賞」でもぶっちぎりの1位で大人気だった森本さん。ラストの崩れさえなければ隙のない良い演奏だったのにと惜しく思います(最後まで完璧なら優勝だったかも)が、それも若さと勢いという一つの輝きかなとも思います。
彼の能力の高さと肝っ玉の強さに経験も加われば、将来、日本の誇るピアニストになる可能性大です✨⭐️ 今後の活躍が楽しみな方です。
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それにしても、
『オーケストラと共演する』という非常事態(笑)を納得の強さで鮮やかに乗り切った尾城さん。
やっぱりこういう土壇場の時に、経験値って力を発揮しますね~~。
とんでもない天才たちに囲まれながらも地道に勝ち上がり、最後にズバッと経験の差で突き放した脚力の強さよ(競馬用語)。
【尾城杏奈/ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第3番 Op.30 】
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今年はコロナの影響で、舞台にもアートにもスポーツにも…あらゆる業界の人に「いつもと違う状況」という戸惑いを与えているように思います。
この非常事態に力を発揮するのは、ベテランの経験値かも知れない・・・
と、尾城さんの健闘を見て、独りで勝手に思いを巡らせている私がここに居るのであった
(°ㅂ°) (つなげた!)