生きる意味を見失った時、おもいだすあの名作②
『生きる意味を見失った時、おもいだすあの名作 ①』のつづきです。
ネタバレ注意!
噴火から命からがら逃げた
グズリとヒナクの夫婦。
しかし、
そこは自力で登ることが不可能な大穴の底だった。
希望を失いかけるも、
穴の底に生える草を見て生きる気力を取り戻す。
その大穴のがけの中腹に
伝説の火の鳥が住んでいて、グズリたちを見おろす。
穴の底で年月は過ぎ、
穴の底にむす植物も増えていく。
また、グズリたちに子供も生まれていった。
地上に出たことのない子供たちは外の世界に憧れる。
「かあちゃ あの空の向こうには何があるの」
「世界が…」
「ね、 かあちゃ おれたちも見たいよう
あの上へ登りたいよう なあ かあちゃ」
「よく聞け…この城(穴)の外へ出るということは
おとうが十年もためしてみた。 だがだめなんだ」
「出られるのはあの火の鳥だけだ!」
さらに年月は過ぎ、
青年に育った息子タケルは決意をいだく。
「おとう!おれはがけを登ってみる」 「いかんっ」
「だめだ そりゃ不可能だ あのがけは
どんなことをしても登れんぞっ」
グズリは妻ヒナクの
子を増やしてもう一度村を作るという望みをかなえるためにも
息子は娘と結婚して子をもうけるべきだと考えている。
がけから落ちて死んでほしくないのである。
「かあさん おれはきょう がけの上へ登る
そしておれの女を見つけてくる…きっと
帰ってくるから待っててくれ」
「タ…ケ…ル…や…」
「お…行き……タケ…ル…」
家族に見送られ、
ついにがけを登り始めるタケル
ひたすら ひたすら
登りつづけるタケル
しかしじょじょに体力の限界が訪れる。
力がはいらず、
登るほどがけがどんどん高くなるような感覚に苦しめられる。
ついに限界がきて、手の感覚もなくなる
「死ぬ」 「死ぬ」 「死ぬ」
死があたまをかすめる。
【手をはなせ】
苦しくて、楽になりたい気持ちに誘惑される。
《生きるのよ !!》
火の鳥が呼びかける。
《生きるのよ !!》
《そうよ あなたは死んじゃあだめ! 生きるの
どんなことがあっても生きのびるの!》
「なぜ?なぜおれが生きなければならない?」
《あなたには生きる権利があるからよ》
(権利?権利とはなんだ?)
《あなたはいま生きているのだもの
だから 生き続けることができるのよ !!》
「うるさいっ おれに説教を聞かせるなっ 鳥のくせにっ」
《私はあなたが生まれたときから見てきたのよ…》
《さあ 目をしっかり開いて上を見て !! 頂上はそこだわ
あそこまで行けばあなたは勝つんだわ!》
「くそッ」
もう一度ちからをふりしぼるタケル。
再び困難ながけを登りだす。
ついに
がけの穴の口に手をかける。
「世界だ!」
生きているから、生き続けることができる。
それが権利。
生まれてきた者の権利。
生きがいだとか、夢だとか、何かの為にだとか、
そんなものがなくても
人は生きるために生きるのだ。
生まれたということは、
きっと、
生きることを生きるためにこの世に来たということなのだ。
生きるということそのものが
生まれてきた理由なのだ。
そんなふうに考えさせてくれた…
この作品は。
「何のために生まれてきたんだ!」
という自問自答がはじまったら、
自分にこう言い聞かせるのだ。
「生きるということを体験しにきた。
だから、
いま苦しいことも、傷ついていることも、悲しいことも、
空しいことも、上手くいってないことも、
それでいい。
これは生きているからこそ感じられること。
心が大きく揺れているその時こそ、
より、生きている、ということだから」
…と。
生きることに迷い、つまづく若者よっ!
(おっちゃんよ、おばちゃんよっ)
上手くいってなくても、上手くできてなくても、
それでいーのだっ(バカボン)
我々はきっと、
痛みも苦しみも困難も、なぁ~んもない世界から来たのダ。
だから、
上手くいかないことを体験しに来たのダ。
上手くいかないこと、それは、
それこそが、おもいどおりの体験なのダ。
とりあえず、生きることに迷ったら
火の鳥の言葉をおもいだしてください。
「いま生きているから、生きつづけられるんだ」
と!
手塚ゴッド、
改めてその偉大さを思い知ります…
昔、漫画大好き!な先輩が居て、
その人は残念そうによくこう言っていたのでした。
と、とっても悔しそうに。
ほんとほんと。
これほどに深い漫画を描ける
奇跡の才能を持っていた人なのにねぇ。
しかし、
そんな手塚ゴッドも唯一の生きがいは
とても気に入っている店に、
そこに食べに行くことだけであったという…。
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ちなみに、
大穴から脱出することが出来たタケルのその後が
火の鳥のほかのシリーズに描かれています。
『火の鳥』はひとつひとつが別時代の話でありながら、
全てが一つに繋がっている
ひじょうに壮大で、そして深い哲学の話です。
せっかく日本人に生まれたのに、
『火の鳥』シリーズを読まないなんて
人生、損しすぎですよ・きっと!
(まるでステマのようですが(笑)
お金もらってません・あしからず)
らいねんは、あんま、
こんな気持ちにならなくていい年だったらいいよねぇ。